Write to think

- ある題材について書くことは,それについて知る最良の手段である - (Gerald M. Weinberg)

読書録『過剰な二人』(林真理子、見城徹)

 本の中で特に目についた付いた文を引用して、自分なりに咀嚼してみる。 

 

「いい仕事の条件は、自己顕示欲と自己嫌悪の間を、絶えずスウィングすること」

 

 時に自信を持ち、また時に自信を失う。そうやって浮き沈みしながら、人は内省するのだろう。その振れ幅を身を以て体験するうちに、人間がいかに弱く、また強くもなれるかを知る。 

 いい仕事は、人の心に響くものだと思う。そのためには心というものをよく観察して知っている必要がある。自己嫌悪するほどに自分の弱さを知ることで、他者にも優しくなれるのだと思う。 

 

 

「プロとアマチュアの違いとは、無駄の差」 

 

 この表現は初めて見たが、納得感がある。当然だが、プロの動き・仕事は洗練されている。それだけの練習・実践の経験の積み重ね、それも、絶えず検証・反省を繰り返し、血のにじむような努力の結果として、磨き抜かれて洗練されていくのだ。スポーツ選手や料理人などをイメージするとわかりやすい。 

 翻って自分の動きはどうか。仕事は多岐にわたるが、特に広報ではプロとしてやっていきたい。しかし、まだまだ無駄が多い。探り探り進めるため、やり直しもしょっちゅうだ。一瞬で効果的なアプローチを見抜けるようになるまで、実践と反省を繰り返していくほかない。 

 そしてそれは、プロになったとしても、絶えず続いていく。 

 

 

「結局、人の心をつかむには、努力しかない。それもただの努力ではない。自分を痛めるほどのものでないと、意味はない。この痛みが、人の心を動かすのだ。」 

 

 痛みが見えるから人の心が動くわけではないだろう。だが、人の心を動かすのは簡単ではないからこそ、痛みを伴うくらいに努力した仕事が必要なのだと考えられる。 

 自分の経験を振り返ってもそうだ。人に思いを伝え、共感してもらえるときというのは、自分の言葉に力が宿るようになるまで考え抜いたときだ。悩み、そこから逃げずに向き合いつづけ、突破口を見つけないといけない。 

 人の心を動かしたいと強く思い、たくさん悩み、痛み、苦しみ、逃げずに乗り越えるという経験を積み重ねることによって、人は成長するのだろう。 

 

 

「せっかく得た成功を捨て、新たな成功に向けて力を開発するのは、面倒だし、大変だ。しかし、それを怠った時、腐敗が始まり、ほどなく死の淵が見えてくる。 

 成功は通過点にすぎない。心底、そう思える人間こそ、美しい。」 

 

 僕は以前、大学入試に合格した後、長い間目標を見失った。一つの大きな目標を達成した後、次はもう一歩進んだストレッチゴールを設定して走り出せれば、もっと速く成長できただろう。だが、また新たな長い努力の道のりを行くのが億劫になり、少し休憩するつもりが再度エンジンをかけられずに、ダラダラと無為な時間を過ごしてしまった。 

 しょせん、僕も怠惰な人間なのだ。大きな目標に向けて地道に努力を続けるのは苦しいし、面倒くさい。 

 しかし今振り返ると、そのような自分の弱さ、怠惰さを知れたことも良かったのかもしれない。怠惰に負けてしまうと、あの頃のような、充足感のない日々を過ごしてしまい、激しい自己嫌悪に見舞われるのだ。 

 人が成長するには、忍耐が必要だ。長く地道な努力を積み重ねるしかない。目標を目指して走り続け、寄り道したくなる気持ちをぐっとこらえ続ける。それは窮屈だろう。だが、大きな目標に到達するには、当たり前に必要なことだろう。 

 このようにわかってはいても、実践するのは簡単ではない。そこで、やらざるを得ない仕組み、状況を作ってしまえば良い。どこかのコミュニティに所属したり、他者にアウトプットを約束したり、責任の伴う依頼を引き受けたり。 

 人間、性善なれど、性怠惰なり。怠惰に打ち克つ忍耐を強制的にでも備えてこそ、人は速く大きく成長できるのだ。