Write to think

- ある題材について書くことは,それについて知る最良の手段である - (Gerald M. Weinberg)

読書録『名作コピーに学ぶ 読ませる文章の書き方』(鈴木康之)

「一行目はどうやって書けばいいんですか」

「二行目を読みたくなるように書くことだよ」

 

 自分で考えながらメモを作るならいいが、誰かに読んでほしいときは、出だしに悩んでしまう。そこに、おぼろげながら光となるのが、「二行目を読みたくなるように」というヒントだ。

 読みたくなる、というのが、何気ないようで実は秀逸だ。自然に読み手の気持ちに立たせてくれるからだ。本書の【はじめに】の書き出しにもあるとおり、「文章は書くものではない 読んでもらうものである」のだ。

 僕が仕事にしている広報においては、プレスリリースのタイトルがまさにこの「一行目」だ。どう書いたら記者が中身を読みたくなるか。アプローチはいろいろな角度がある。効果的なものを書けるまで、書いて、書いて、また違う角度から書いて、書き重ねることで見つけていく。

 

 

「「無からの創造」に対して、私はこのことを「有の発見」と呼んでいます。あるはずのよりよい表現を探し出す、それがコピーライティングでありデザインの仕事だと思っています。」

 

 コピーライティングは創造的な仕事だと思うが、そのプロセスは、創造よりも探求・発見の方が近いといことか。ならば、努力がものを言う。自分にだって、探求を粘り強く続けることで創造的になれる。

 

 

「情報の整理のつぎは、言葉の整理、文章の整理です。なくてもいい言葉を見つけなさい。」

 

 相手に読んでもらうためには、読みやすく、無駄なく、すんなりと頭に入ってくる文章でなければいけない。だから、書いたら読み直して、なくてもいい言葉を見つけ、書き直す。この繰り返しが文章をスマートにしていくのだ。

 

 

(本書の最後の【まとめ】を全文引用)

「文章は書くものではなく、読んでもらうものです。

 読む人が、知ってトクするように、読んで満足するように、書きなさい。

 文章は中身がだいじ。中身探しのために知らない話の世界を訪ねなさい。

 書き上手になろうと思わずに、聞き上手になりなさい。調べ上手になりなさい。

 人と違うことを考えなさい。想像の翼で自由に飛びなさい。

 あなた自身が感動した話、読む人がきっと喜ぶ土産話を聞かせなさい。

 中身にふさわしい書き方を考え出しなさい。気分を出して書きなさい。

 モノ、コト、オモイ、すべて読む人への説明だと思いなさい。

 親切に、丁寧に、読んでもらいたいという気持ちを込めて書きなさい。

 サービス精神たっぷりの、見た目にいい文章に仕立てなさい。

 書き直しなさい。文章を書くとは、書き直すことです。

 書き直していけば、どんどんいい文章になります。

 書き直せば、いい文章は、幕の内弁当のように仕上がって、読む人の前に出ます。」

 

 文章は、読む人のためのもの。だから、読む価値があるように、中身を充実させるために、たくさん調べ、聞き、感動し、絞り込む。伝えたいモノ、コト、オモイを、きちんと、丁寧に説明する。効果的に伝わるように、無駄がないように、読みたくなるように、何度も何度も書き直す。

 いい文章を書くのに近道はない。だが、着実な道はある。真面目に歩み続けることで、文章は良くなるのだ。