Write to think

- ある題材について書くことは,それについて知る最良の手段である - (Gerald M. Weinberg)

アウトプットによる学習効果

先週、このブログの名前を”Private Labo.”に変更した。このブログは僕の稚拙な思索を少しでも整理し、筋道を立てて試験的に表現してみることによって思索の結論を評価しやすくすることと、人からもしコメントを頂ければより深い思考につなげることを目論んでいる。当面の目標は、一週間に一本のペースで原稿を書くことである。

 

しかし初めて見るとこれが非常に難しい。書いてみようと思うテーマがないわけではない。僕は普段から備忘録用のノートを持ち歩き、何か思索が始まったときはバーッと書くようにしているので、いくらかネタもある。しかし実際に原稿を書き始めると、そのメモにある程度では、全く使えない知識や情報の断片群にすぎないのだと思い知らされる。何だか分かったような気になっていても、それを表現できないうちは本当に分かっていないのだ。

 

僕の尊敬しているライフネット生命保険社長の出口治明さんが、著書『「思考軸」をつくれ』(英治出版)の中で次のようなことを語っている。

そうやってインプットの蓄積を増やしていくと、あるところを境にして、あたかも水槽の水があふれ出るようにラクにアウトプットができるようになる瞬間がきます。そうならないうちはまだまだインプットが足りないのです。

こうして実際にものを書こうとすると、全くその通りだということを痛感する。いつか水があふれ出るような体験ができるように頑張りたい。

 

僕のアウトプットはまだまだ四苦八苦している段階である。だがそれでも得られるものは大きい。まず、自分はどこが分かっていないのか、が分かることだ。さらに、この際に気になって調べてみたことは非常によく記憶に残る。頭の中に宙ぶらりんに浮遊していた断片的な知識たちが少しずつつながり始め、その関係性が見えてくるようだ。それは例えるなら、ジグソーパズルのバラバラな状態の各ピースが少しずつ連なって固まりができ、全体の中で位置や、ほかの固まりたちとの関係性が見えてくるような感じだ。

 

 

こうしてアウトプットによる学習効果を感じているわけだが、ここでもう少しこの学習効果について考えてみたい。そこで、英語学習の場面を例にして考えてみることにする。

 

中学・高校時代の英語の授業では、主に文法を中心に勉強してきた。次々現れてくる文法をまず暗記し、テストを通して身に着けようとするわけだ。しかし僕の記憶力では、残念ながらあまり正確には覚えていられないようだった。どうやらインプットだけでは正確に理解することは難しいようだ。そこで活躍するのが英作文だ。英作文をしようとすると、「おや、ここは過去形か?それとも完了形か?」、あるいは「aなのかtheなのか?」、はたまた「単数形?複数形?それとも原形?」と怪しい点が次々出てくる。それでもう一度文法書を引っぱってきて説明を読んで、ようやく腑に落ちる程度まで理解できるのだ。

 

もう一つ、僕に立ちはだかった壁がある。それはリスニングだ。不幸(幸運?)にも僕たちの一つ上の学年からセンター試験にリスニングが導入されたため、いい加減に済ますわけにはいかなかった。しかし授業で先生の英語や教科書の英語の音声を聞いているだけではリスニング能力が上がるとは思えない。教科書と同じ文章の音声であれば聞き取れるが、全く初めて聞く文章となるとどうも具合が悪い。さてこのリスニング能力をどうやったら上げることができるものか?

 

僕なりのその答えは、音読である。それもできるだけ正しい発音を心掛けて、たくさん音読をすることだ。普通の学習スタイルでは、単語や熟語、コロケーションを文字で覚えている。しかしリスニングは文字ではなく音だ。だから音で覚える必要がある。そういうわけで音読を始めるのだが、これには予想外の嬉しい副作用がある。それは、自分が教科書の音読をしてみたとすると、次に教科書の音声を聞いたときに「お!ここはこんな風に発音するのか!」という発見があることだ。発音の仕方、抑揚やアクセントのつけ方に敏感になるのだ。また、自分が発音し慣れてきた言葉は耳に入りやすくもなる。英語の音に対してアンテナが立つような感じだ。

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この英語学習の例から、アウトプットによる学習効果を一般化してまとめることを試みると、以下のような項目を挙げることができる。

①自分が正確に分かっていないところ、理解が欠けているところを自覚できる。

②何が分からないのかを自覚した上でその部分を調べて理解したことは、記憶の定着が良い。

③知識や情報の使い方、使われ方を感覚的につかむことができる。

④関連する知識や情報に対する感度が格段に上がる。

 

 

やはりアウトプットという過程は知識や技術を習得するうえで欠かせないことだと思う。この原稿自体、非常に四苦八苦してここまで書いてきたのであるが、これからも頭に浮かんだテーマを取り上げては思索を深め、この場を借りてアウトプットをしていきたいと思う。最後に自分への励ましの言葉として、再び出口社長の著書から一文を引用しておく。

 

締め切りのあるまとまった量の課題に対し、ある程度の質のアウトプットを続けると人の能力は格段に上がる。