Write to think

- ある題材について書くことは,それについて知る最良の手段である - (Gerald M. Weinberg)

TOEIC、英語力、成長力

今日はTOEICを受けてきた。快心の出来とは言いがたいが、前回の受験では途中でお腹が痛くなってトイレ休憩を挟んでしまったことを思えば今回は少なくともちゃんと最後まで座っていることはできたので、よしとしておこう。

 

TOEICは今では、大学生や社会人にはおなじみの言葉になっている。大学院進学の際や就職活動で必要となることもしばしば、また会社に入ってからも昇進などの条件に含まれることもあるようだ。

 

さて、そんなTOEICであるが、これは決して英語運用能力を十分に表す指標とは言えない。試験はListeningとReadingのみで、SpeakingとWritingは別にTOEIC SWというテストを受けなければ特に必要ない。さらに出てくる英語もビジネス英語に限られており、非常に狭い場面にしか対応していないとも言える。TOEICで高得点を取れたからといって、それで満足してはいけないということになる。

 

TOEICはじめ学校の試験などの点数は、ある能力のほんの一面を表しているに過ぎない。それは能力を客観的に評価しやすくするために、点数(数値)という一次元に落とし込んでいるに過ぎない。しかし能力そのものは本来一次元的なものではないだろう。例えるなら、高次元のベクトルが能力であり、その大きさをとって一次元化したものが点数である。TOEICの点数が高いから英語が良くできるとか、学歴が高い(すなわち偏差値が高かった)から優秀だとか、そんなことは一切言えない。

 

しかし一方で、僕はこのテストの点数は非常に価値があると思っている。TOEICの場合、短い時間にかなりの分量を読んで回答していくことになり、高得点をとるには英語を英語のまま理解していくことが必須である。文法の理解やそれ相応の語彙力は言うまでもない。したがってTOEICを通して身に付く力は、英語の勘をつかむのに良いだろうと思う。僕の感覚では、英語を扱うための基礎力のような感じだ。

 

この基礎力と言っているのは、例えば野球のピッチャーでは球速に当たる。ピッチャーというのは、球の速いほうが望ましい。なぜならたとえコントロールや変化球が優れていても、それを引き立てるのは速いストレートが投げられることだからだ。高校野球ではそれほど球速の速くない投手もいるが、甲子園レベルになるとかなりの球速を出す投手ばかりだ。その中でもプロに上がれるのは、かなりの球速を持ち、かつ他に光るものを持っている者に限られてくる。したがって成長途上の段階では、多少コントロールや変化球に難があっても球速の向上に努めるのが良い。

 

 

もう一つ、TOEICのような試験を受けることの重要な価値がある。それは、明確な目標を設定し、それを達成するために努力をして力をつける、というプロセスを経ることだ。試験がなくても英語の勉強をすることはできるが、それで勉強していることに満足していてはあまり意味がない。英語の勉強をするなら、力をつけるといことが大事なのであり、実際に力がついたかどうかで評価されなければならない。こうしてリアリストに徹してみることで、人は妥協せずに力をつけることができるのだと思う。例えばTOEICで必死に努力して高得点を取れるようになったとすれば、その人は単に英語の能力だけでなく、さらに重要な「目標に向かって努力し成長する」という力をつけることになるだろう。

 

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TOEICのスコアは、日本では一流(?)企業は730点を求めると言うが、お隣の韓国の大手サムスンでは900点が最低ラインだそうだ。言わば足きりラインである。今日の僕のテストの感触ではサムスンを受験させてもらえるかどうか疑わしい。

サムスンが900点以上求めるからそれくらい必要だ、というのではない。しかし、そういった世界で当たり前に努力して力をつけていく韓国人たちと今後僕たちは対等に渡り合っていかなければならない。だとすれば、その「努力して成長する力」で負けてはいられない。

ということで今年中に再挑戦し、970点以上を目指すことにする。

 

 

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追記:

『新TOEICテストBEYOND990』(アルク)という本の中で、著者の一人、ヒロ前田さんがこんなことを書いている。

「900点を何度も取る人は、テストにおいて「上限」に達しているだけであり、実力は1200点レベルなのです。TOEICが測定できないほどの高い力を持っているからこそ、満点が出ているのです。(中略)

1200点を取る力を養い、余裕で990点を取る。」

全くであると思う。